映画「シンプル・フェイバー」の感想(ネタバレあり)・レビュー・評価・あらすじ・動画配信まとめです。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
上映日 | 2019年3月8日 |
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製作国 | アメリカ、カナダ |
ジャンル | サスペンス |
監督 | ポール・フェイグ |
脚本 | ポール・フェイグ |
キャスト | アナ・ケンドリック、ブレイク・ライブリー、ヘンリー・ゴールディング、イアン・ホウ、ジョシュア・サティーン、etc. |
上映時間 | 117分 |
あらすじ
ニューヨーク郊外に住むシングルマザーのステファニー(アナ・ケンドリック)はブログを運営している。
ある日、同じクラスに息子を通わせるエミリー(ブレイク・ライブリー)に誘われて、豪華な邸宅を訪ねることになる。
事故で夫を失い、保険金を切り崩しながら子供を育てている朗らかで気立てのいいステファニーと、スランプに陥っている作家の夫、ショーン(ヘンリー・ゴールディング)と愛し合い、華やかなファッション業界で働くどこか気怠くミステリアスなエミリー。
対照的なふたりだったが、親密な仲になっていった。
ある日、エミリーが突然失踪してしまう。
親友を助けたいと思ったステファニーは、自身のブログでも情報を募るが、彼女の行方はつかめなかった。
やがてミシガン州でエミリーを目撃したという情報が入るが……。
映画「シンプル・フェイバー」予告編
感想(ネタバレあり)
映画全体の雰囲気と感想
映画全体の雰囲気は、初めは軽やかで上品なコメディのような印象を与えます。
ステファニーのキャラクターは、真面目でややうるさいママブロガーとして描かれ、彼女のブログやYouTubeチャンネルが映画の最初の部分でのユーモラスなアクセントとなります。
しかし、エミリーの失踪とともに物語が進むにつれて、そのトーンは一変し、次第にサスペンスとスリルが高まります。
映画の後半では、予想を裏切るような展開が連続して起こり、観客は常に次の展開を予測できない状況に追い込まれます。
『シンプル・フェイバー』は、まさに「サスペンス」を体現した映画であり、スリル満点でどんどん引き込まれていきました。
キャラクターについて
主人公ステファニーは、最初は少し空気を読まないようなキャラクターで、エミリーに対して憧れを持ちながらも、彼女の自由で謎めいた魅力に引き寄せられています。
ステファニーの純粋でお節介な性格が、エミリーの反対にあたるようなキャラクターと対比を成すことで、物語が面白くなっていきます。
一方、エミリー(ブレイク・ライヴリー)は、魅力的で計算高い女性であり、その複雑なキャラクターが物語を通じて徐々に明らかになっていきます。
最初は魅力的で完璧に見える彼女が、次第に冷徹で危険な面を見せ始める様子が、映画全体にスリリングな緊張感を与えます。
ブレイク・ライヴリーの演技は非常に洗練されており、エミリーの不気味さと魅力の両方を見事に表現しています。
そして、映画の後半では、ステファニーとエミリーの関係がますます複雑になり、二人の間に明確な敵対関係が形成されます。
エミリーの消失後、ステファニーは自分の中でエミリーに対する感情が変わり、単なる友人関係を超えて、少しずつ支配と反発の要素が加わっていきます。
プロットとツイスト
『シンプル・フェイバー』で最も魅力的なのは、数々の予想外のツイストが登場するところです。
映画の初めでは、エミリーの失踪は単なる事故か、失踪事件であるように見えますが、次第にその背後に隠された真実が明かされていきます。
特に印象的だったのは、エミリーが実は生きていて、別の人物として再登場するシーンです。
エミリーは、ステファニーを引き込んで、彼女に自分の計画を実行させるように仕向けていきます。
エミリーの計画は非常に緻密で冷徹で、ステファニーの善意を利用して、自分の目的を果たそうとするところがとても衝撃的でした。
最終的に明かされるエミリーの真実は、彼女が一度死んだことに見せかけ、全てを操っていたというものです。
予想を裏切るこの展開には驚かされましたし、彼女が最初から最後まで計算尽くで行動していたことがわかる瞬間は、サスペンス映画の醍醐味を感じさせました。
主題とメッセージ
『シンプル・フェイバー』の背後には、「人は見かけ通りではない」「善悪の境界線は曖昧」というテーマがあるように感じました。
特にエミリーは、最初は魅力的で完璧に見えるが、実際には非常に計算高く、冷徹な人物です。
彼女は他人を操作し、支配しようとする冷静な立場を取りますが、その中で一番重要なのは、彼女の動機が単に自己保身や金銭的な利益のためではなく、ある意味で自分自身の「物語」を作り上げようとする欲求に基づいているという点です。
一方、ステファニーは、非常に善良で他人のために動くタイプの人物で、エミリーとの関わりを通じて、少しずつ変化し、成長します。
しかしその成長は、決して「善」とは言い切れない部分があり、彼女自身もエミリーに対して完全に自分を投影していく過程が描かれています。
この映画は、人間の多面性や、他人の「表面」と内面とのギャップを描いており、そのメッセージは非常に深いものがあります。
終わり方とその解釈
映画の最後に、エミリーが完全に勝利を収めるような形で物語が締めくくられます。
彼女は自分の目的を達成し、ステファニーもその計画に巻き込まれていきますが、最終的にはエミリーの冷徹な支配を受け入れる形に。
エミリーのような人物が勝つことで、映画は皮肉的で暗い結末を迎えますが、それが逆にこの映画の魅力とも言えます。
この終わり方は、観客に強烈な印象を与えるとともに、「誰が本当の悪者だったのか?」という問いを投げかけ、観る人に思索を促すような終わり方でした。
総評・まとめ
『シンプル・フェイバー』は、単なるサスペンス映画を超えて、人間の心の奥底に潜む複雑な感情や欲望を描いた非常に面白い作品でした。
予測不可能な展開と、キャラクター同士の絡みが絶妙で、特にエミリーというキャラクターが映画全体の魅力を引き立てています。
サスペンス、スリラー、そして少しのブラックユーモアがうまく融合しており、観終わった後に余韻が残る映画でした。
個人的には、エミリーの冷徹なキャラクターが一番印象的で、最後までその不気味さと魅力に引き込まれました。