映画「レンタル×ファミリー」の感想(ネタバレあり)・レビュー・評価・あらすじ・動画配信まとめです。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
上映日 | 2023年6月10日 |
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製作国 | 日本 |
ジャンル | ヒューマン |
監督 | 阪本武仁 |
脚本 | 阪本武仁 |
キャスト | 塩谷瞬、白石優愛、でんでん、川上奈々美、etc. |
上映時間 | 107分 |
あらすじ
子どものために父親を“レンタル”するシングルマザー。
束の間の幸せを得る人、金で買える幸せにやがて依存していく人、そして“父親”が実は雇われていた他人だったということを知った子どもーー。
家族の在り方も、幸せの価値も多種多様な現代社会で生まれた実在のサービス【人間レンタル屋】 。
時代のニーズに応え人の幸せを願い、仕事に真摯に向き合おうとする主人公とサービスにまつわる3つの家族の物語が生々しく綴られる。
彼らがたどりついた結末とは…
映画「レンタル×ファミリー」予告編
感想(ネタバレあり)
レンタル家族という業の深さ
この映画の核となっているのは、まさにそのタイトル通り「レンタル家族」というビジネス。
主人公の三上(塩谷瞬)が、様々なクライアントの要望に応じて「家族」を演じる姿が描かれます。
これがもう、観ていて胸が締め付けられるんですよね。
例えば、結婚式で親戚を演じたり、孤独な高齢者の話し相手になったり。
一見すると、困っている人を助ける尊い仕事にも見えるんです。
でも、そこには常に「虚構」がつきまとっている。
演じる側も、演じられる側も、どこか割り切れない感情を抱えているのが痛いほど伝わってきました。
それぞれの空白とそれでも求める繋がり
登場人物たちがレンタル家族に何を求めているのか、そこがこの映画の大きな見どころだと感じました。
孤独を埋めたい人、失った家族の代わりを求める人、そして何らかの理由で普通の家族関係を築けない人たち。
彼らにはそれぞれ、心にぽっかりと開いた「空白」があるんです。
その空白を埋めるために、一時的であっても「家族」という形を借りる。
特に心を揺さぶられたのは、レンタル家族を依頼する側の人々の描写です。
彼らが抱える寂しさや切望が、本当にリアルに描かれていました。
偽りの関係だとわかっていても、人とのつながりを求める気持ちは本物。
その切実さが、観ているこちらの胸に迫ってきて、涙なしには観られませんでした。
ラストが問いかける家族の定義
一番考えさせられたのは、やはりエンディングです。
具体的な描写は避けますが、あのラストは、観客に「家族とは何か?」という問いを投げかけているように感じました。
血の繋がりがなくても、家族と呼べる関係はあるのか?
偽りから始まった関係でも、そこに愛や温かさは生まれるのか?
正解のない問いだからこそ、観終わった後もずっと頭の中でその答えを探していました。
もしかしたら、この映画が描きたかったのは、完璧な「家族」の姿ではなく、不完全で、ときに傷つけ合いながらも、お互いを求め合う「人」と「人」の関係性だったのかもしれません。
総評・まとめ
『レンタル×ファミリー』は、私たちの社会が抱える孤独や、家族というものの曖昧さを浮き彫りにする、非常に示唆に富んだ作品でした。
決して派手な展開があるわけではありませんが、登場人物たちの繊細な心の動きが丁寧に描かれていて、気づけば彼らの物語に引き込まれていました。
観終わった後に、自分の家族や、大切な人との関係について改めて考えさせられる、そんな深みのある映画です。